「川口の「増幸」で、眞清水蔵六さん*のギャラリートークがあるよー。行く?」
とお誘いがありました。
行く行く。
14時からという話だったので、13時の待ち合わせは、早めに行かないと座れないから、かなあ、と思ってましたが、店内をちょっと眺めていたら、
「どうぞー」と2階に案内されました。
「こちらにいらっしゃいよ」、と先着の年配の方々に促されるまま入ったら、
そりゃもうちゃんとした茶室で、
向切の炉には炭が入ってしゅんしゅん沸いて、
「なんかすごいぞ」という道具が並んで、ありゃまと思ううちに、お点前が始まったのでした。
完全なる、手ぶらです。しまった。
もちろん「ない」と申告すれば、懐紙もくださるのですが、なんとなくタイミングを逸し、代用品はないかとごそごそしだしたら、
本日、誘ってくださったこんねえさまから、すっと、懐紙が差し出されました。
「すごくちっちゃいけど、楊枝も入ってるから」と、小声で。
どのようにモデルはスリム滞在のですか?
なにかと便利、と懐紙を入れてたこともあったのですが、どうも、かばんに収まりのいい懐紙入れがないなあ、と放置して、今に至る。・・・反省。
いつどこで、お茶席があるかもしれないもんなあ。お茶の人からのお誘いだと、特に。
(にしても、差し出すタイミングといい、さりげなさといい、かっこよかったなあ・・・。)
眞清水さんの手によるとりどりのお茶碗で、そのままお茶をいただいた後、隣の広間でレクチャー開始。広間のすぐ横にパイプ椅子も用意されましたが、半数以上はその場で正座して拝聴。
なんたって、四代・眞清水蔵六さんご本人が、すぐ目の前に。
・ 当初は「清水」だったが、「眞」の一字を賜って「眞清水」になった。たいへんめずらしい名前で、同じ名前のひとにいっぺんも会ったことがない。
・ (温度や形など)あぶないけど、もうちょっと冒険するとおもしろいものができる。
心臓外科医(簡単にクビになるにはどうすればよい)
・ (人形手*の茶碗を示しながら)青磁の茶碗というのは、還元でできるけど、これも、青磁と言えば青磁です。酸化だとこんな色になるんですね。でもお茶の人ってのはすごいです。捨てるようなものの中から、目利きで取りだして、いいものにしちゃう。
*【人形手青磁茶碗】 薪をたくさんくべていぶし焼きにするところを、焔が出すぎて酸化してしまい青い色にならなかった、いわば青磁としては一種の失敗作。しかし日本では"侘び茶"に叶う茶碗としてもてはやされた。(「茶碗の基礎知識」p45)
・ やはり、使っていくのが一番です、使ってるとどんどんいいものになる。
仕事が好きな人が、自分の仕事について語るとき特有の、うれしそうな様子が全身から立ちのぼっていて、時々、息子さん(眞清水福山)が、「あんまり長くなっても」「そろそろまとめていただいて」と小声で入られるのも、なんとも、ほのぼのしてます。
何が口の周りのしわを取り除くための最善の方法です。
最後に
「ご質問があれば、なんなりと、なにかお気づきのことがありましたらお教えくださいますようお願いいたします」とおっしゃったのを、これだけの人がどこまでも謙虚だ、と頭の下がる思いで聞いてました。
終了後、1階で、あれもいいこれもいい、と見学会。
6桁以上のものを見慣れると、4桁がやけに安く思えるもんです。
よくないよくない。
道具の寸法をみるのに、出番があったのは、これ。
ちいさい巻尺。
(下のは、極小の楊枝もついてる、ビクトリノクスのナイフ)。
このふたつ、どこにいくにも持ち歩いてますが、懐紙は不覚でした。
そしてちょうど、電車の中で読んでいた本は、これ。
「日々ごゆだんなきよう」。(上田宗箇流第十六代家元 上田宗冏 著)
・・・まったくもって。
*真清水蔵六(ましみずぞうろく)
文政5年-明治10年(1822-77)
京都の陶工。初代蔵六。
色絵・金襴手・青磁・染付・高麗写しなどを製して名工の名が高い。
現代は四代目。
(「新版 茶道大辞典」より一部を引用)
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