水がなくなる=食べ物がなくなる
水がない → 農業用水がない → 穀物が育たない
→ 家畜飼料がない → 家畜が育たない
→ 鶏卵、鶏肉、豚肉、牛乳、牛肉がない
牛肉1kg生産するのに投入される水の量は?
牛肉1kg=穀物7kg=農業用水7t
(ワールドウォッチ研究所試算)
牛肉1kg=穀物10kg=農業用水20t
(東京大学生産技術研究所の沖大幹助教授等のグループ試算)
日本人が食する家畜は牧草ではなく穀物で肥育されている。
その穀物は海外の地下水で生産される。
肉を食うとは、地下水を食っているようなものだ。
その地下水は石油のように有限で、枯れ始めている。
サイエンスZERO 2005年10月8日第98回
地下水が消える?ひそかに迫る世界の水危機
アメリカやインドなど乾燥地帯の農業を支えている地下水。現在、その地下水が
深刻な危機に直面している。食料増産のために大量の地下水を汲み上げた結果、
世界各地で地下水が枯渇し、近い将来農業ができなくなる可能性があるのだ。
アメリカ中西部では、日本の面積ほどもある巨大地下水源が無くなろうとしている。
日本も地下水の危機に無縁ではない。日本が大量に輸入する食料、たとえば
小麦1キロを作るには2トン、牛肉1キロには20トンもの水が必要だ。こうした
輸入される食料などの生産に使われている水は、「バーチャルウォーター」と
呼ばれるが、「バーチャルウォーター」に注目すると日本は大量の水を食料の形で
輸入する「水の大量輸入国」となる。
水浪費型から節水型の農業へ限られた水資源を有効に使い、食料危機を防ぐことは
できるのか。点滴灌漑システムなど地下水位の低下を食い止める最新の研究を交え、
地中のなかでひそかに進行する地下水の危機を伝える。
【出演】 キャスター 眞鍋かをり
熊倉悟アナウンサー
専門ゲスト 沖 大幹(東京大学生産技術研究所 助教授)
コメンテーター 佐倉 統(東京大学助教授)
1970年代、日本は地下水の過剰汲み上げで地盤沈下が社会問題になった。
そこで地下水の揚水量が規制され、現在は地下水の水位が回復した。
阪神大震災で病院の水道が止まる事態が起こった。
その教訓から安定供給先確保として地下水を利用している病院を紹介している。
(揚水規制の範囲内で)地下水を汲み上げろ過して人工透析などに使っている。
日本の地下水利用比率は生活用水と工業用水が高く、
(食べ物を輸入に頼っているので)農業用水が低い。
一方、世界で地下水の利用比率は農業用水が最も多い。
1970年代後半、インドは食料自給率100%を達成した。
インドの第二の食糧生産基地は北部のパンジャブ州だ。
パンジャブ州は小麦の22%、米の12%を生産する。
しかし、パンジャブ州は農業に適さない乾燥地帯だ。
年間降水量は日本の1/3以下で500mmしかない。
パンジャブ州の乾燥地帯は、電動ポンプにより地下水を揚水し、
農業用水として使用することで農地になっている。
インド全国に掘られている井戸はおよそ2千万本だ。
その井戸の数は30年で4倍に増えた。
インドは大量の地下水を揚水することによって
乾燥地帯を食料基地に変えた。
それで、世界第2位の人口を養っている。
インドのような戦略は、20世紀、地球規模で広がっている。
この100年で世界人口は4倍に増えた。
その根底を支えたのは使用量が6倍に増えた農業用水だ。
人類は乾燥地帯を地下水で農地に変えることによって
人口問題を解決してきた。
しかし、今、パンジャブ州は地下水位の深刻な低下に直面している。
赤い部分は地下水が大幅に低下した地域だ。
1960年代以降、地下水は減少してきた。
驚くべきことに、パンジャブ州の9割は地下の水位が低下している。
地下水の量は雨の量で左右される。
雨が降った後は、地下水が増える。
"うつ病の雇用の喪失"
雨で補充される以上に汲み上げれば、地下水は低下してゆく。
雨が少ない乾燥地帯で大量に地下水を汲み上げると、
井戸が枯れるという危機に直面する。
地下水の枯渇が現実になっている。
パンジャブ州で40haの農地を持つ大規模農家の井戸が枯れた。
今年3月、深さ50mの井戸が枯れた。井戸の底が乾いている。
この1年、この他にもこの富農の持つ井戸が3本枯れた。
この富農は仕方なく新たな井戸を掘る。
富農だからこそ新しい井戸を掘ることができる。
120mの深度まで井戸を掘ると水が出た。
この富農は「この井戸もいつ枯れるか分からない。」と不安を訴えた。
パンジャブ州は毎年1m以上のスピードで地下水の水位が低下している。
それで、100m以上の深さの井戸は珍しくない。
ここまで地下水の水位が低くなると離農する農家も増えている。
「果てしない地下水の汲み上げを続けることは
農業の基盤を自ら破壊することに他ならない。」
「やがてはインド全体が食糧不足に苦しむでしょう。」と
グルデバ・ヒラ教授は警告している。
乾燥地帯は農業に適していない。
しかし、植物の生長に必要な水、日光、二酸化炭素のうち、
乾燥地帯には強力な日光、二酸化炭素はある。
だから、水さえあれば、乾燥地帯は条件付の農業適地である。
日本は工業用水の揚水規制をしてうまくいった。
インドにも同じことはできないのか?
工業製品に占める工業用水コストは1%にも満たないので
日本では(水道などで代替できるので)揚水規制ができた。
しかし、インドでは穀物の値段が安いので
農業用水の揚水規制は難しいだろう。
アメリカ、カンザス州西部、年間降水量500mmの乾燥地帯
ここに緑の農地が広がっている。
大規模に水をまく灌漑(かんがい)農業が行われている。
畑で自動的に水をまく装置「センターピボット」が組まれている。
長さ400mのアームに250本のスプリンクラーが取り付けられている。
このアームが円を描くように時計の針を回るように動き、
広い農地にあまねく水をまく。
人手がほとんどかからないため農家は積極的に
農地拡大を進めることができた。
使う水は地下水だ。
センターピボット1つ当たり、1日、400万リットルの地下水を揚水する。
北米大陸、八つの州にまたがる巨大な地下水源
北米大陸最大の地下水源、オガララ帯水層
立体抽出のモデル映像
蓄えられている水の量は4兆トン
琵琶湖の水、150杯分に相当
地下1000mに水を通さない岩盤があり、
その上の地層に数千年の時間をかけて水が溜められた。
オガララ帯水層の西にあるロッキー山脈の雪解け水から
水が供給され、豊かな帯水層になった。
ところが、今、この地下水が危機に直面している。
カンザス州とアメリカ地質調査所は地下水の水位を継続的に監視している。
2万本の井戸の調査から地下水が広い範囲に減少していることがわかった。
過去50年で地下水がどのくらい減ったかを示す図だ。
赤は半分以上使い果たした地域だ。
カンザス州を含む南半分に赤の地域が多い。
カンザス州を含む南半分の地下水には
ロッキー山脈からの水の補充がない。
年間500mmの雨の一部がわずかにしみこむだけだ。
地下水は急速に減る一方だ。
減量重量マシン
このまま地下水の大量使用が25年間続くと
地域によっては灌漑用の水はおろか、
飲み水さえ残っていない危機的な状態になる。
カンザス州西部スコット郡地下水管理組合
地下水を使い果たしてしまった度合いを示す図
-100%、すべての地下水を使い果たしてしまった地域もあった。
これは私たちの次の世代にとんでもない負の遺産を
押し付けてしまうことになる。
「この地域の農業に明るい未来を描くことはできません。
今後、穀物の生産は大幅に減ってゆくしかないのです。」
地下水の枯渇に拍車をかけているもう1つの原因がある。
牛の餌として栽培されているトウモロコシだ。
栄養価の高いトウモロコシは牛を肥育するときの家畜飼料として最適だ。
カンザス州は小麦の栽培が中心だったが、
世界的な食肉の需要拡大で家畜飼料用のトウモロコシの栽培が急増している。
トウモロコシは多くの農業用水を必要とする穀物だ。
畑が同じ面積であれば、トウモロコシは小麦の約3倍の水を必要とする。
小麦は涼しい季節に成長するが、トウモロコシは暑い季節に成長するので、
トウモロコシを栽培するときは畑から水分の蒸発が激しい。さらに、
小麦は高さ1mにも満たないのに対し、トウモロコシは2m以上になる。
トウモロコシはその大きな体を夏の間に維持しなければならないので、
多くの水が必要になる。そうアラン・シュリーゲル教授は言う。
(研究機関の試算によっては、条件次第で重量単位あたりの
穀物生産に必要とする水投入量が違う。)
トウモロコシは小麦に比べたくさんの水を要するが、
同じ畑の面積であれば、小麦の三倍の価格で売れる。
水はいくら使ってもタダだ。
水を多く使ってもトウモロコシを栽培するほうが、
利益は上がる。それでカンザス州のトウモロコシの
栽培面積がこの10年で3倍になる。
「あと10年か15年は水を使ってゆけるでしょう。」
「この水がある限り、水を使い続けてゆきたい。」
年間降水量500mの乾燥地帯では、
地下水の層にしみこむ水はごくわずかだ。
地下水の量が元に戻るまでには千年、二千年かかる。
小麦1kg生産するのに水2tを投入する。
牛肉1kg生産するのに水20tを投入する。
(研究機関の試算によっては、条件次第で重量単位あたりの
穀物生産に必要とする水投入量が違う。)
日本が輸入する食料を生産するのにかかる水の量は毎年600億tだ。
日本は毎年600億tの水を輸入していることになる。
この水が仮想水、バーチャルウォーターだ。
日本の水の輸入量は過去30年間で2.3倍に増加した。
家畜肉の輸入と家畜飼料の輸入増加でバーチャルウォーターが増えた。
これは日本人の食生活が穀物中心から肉中心に変化した結果だ。
つまり、国産牛を食することは家畜飼料を消費することであり、
その家畜飼料を育てる海外の水を消費していることになる。
日本の場合、水が足りないというよりも
土地が足りないから食糧を輸入している。
(日本は農家をやるよりも工業やサービス業で稼いだお金によって
海外から食糧を輸入したほうが効率が良いから。)
20世紀後半の農業は大量の化学肥料、地下水を使って
経済的に効率良く食糧を生産した。しかし、それは
永続的な生産形態、持続的な生産方法ではない。
インド・ラジャスタン州、乾燥地帯の農村
村の周辺にはいくつもの人工の溜め池がある。
それはジョハドと呼ばれる。
以前、この地方では少ない量の雨水を補うために
溜め池が数多く作られていた。
ところが、農地拡大のために溜め池は潰され、
深刻な水不足になった。
双子の滝レーシック手術
そこで、20年前からジョハドを復活させる運動が始まった。
ジョハド復活のためには村人が総出でジョハドを作った。
この地方で復活したジョハドの数は20年間で8600個にもなった。
モンスーンの雨でジョハドに水がたまる。
ジョハド一ヶ所に水がたまると蒸発しにくくなり、
池の底から地下に水がしみこむようになる。
ジョハドを復活させると、その10年後に枯れた地下水が元に戻った。
枯れた井戸に水が戻り、20メートルまで水位が回復した。
ジョハドのおかげで地下水が戻り、
トマトやナスなどの換金作物を栽培して市場に売った。
現金を手にした村人は豊かな生活ができるようになった。
「私たちの暮らしも生き返った。」
経済効率だけを優先するこれまでのあり方を改め、
自然の循環を大切にして
地下水を持続的に使う取り組みが始まっている。
農業用水を節約する研究
スプリンクラーに代わるトウモロコシの栽培をする研究
トウモロコシ畑の列に沿ってゴムのチューブが敷かれている。
ゴムのチューブから水を撒く点滴灌漑
トウモロコシの根にだけ水を撒く方法は従来の約20%の水の節約になる。
畑の地下に設置された巨大な重量計
畑からのムダな水の蒸発をなくせば、農業用水は半分以下で済む。
この重量計で直径1mの円内の畑の重量を測定する。
畑に水を撒けば、この円を測るとこにより、
畑の水の量を正確に知ることができる。
トウモロコシが吸い上げた水を量は「茎流量センサー」で測定される。
トウモロコシが生長するときに、
いつどれだけ水を使うかを細かく測定する。
「撒いた水の量」から「トウモロコシが吸い上げた量」を引けば
ムダな水の量がわかる。
ムダな水がゼロになるよう理想的な条件を探っている。
「作物の必要とする量だけ水を与えるのは非常に良い方法です。
どのような作物に、どのような生長過程で、どのようなタイミングで
どのくらいの量を与えるのが良いのか基準作りをしたいです。」
あれはレイン・ハーベスティング、雨の収穫と呼ばれ、
世界中で何とか雨を上手に使う取り組まれている。
水は石油と違い循環してゆくのでうまくゆけば、
地下水が復活するのも無理なことではない。
水は身近な飲料水や水道水だけではなく、
地下水や食糧生産に必要な外国の水のこと、
濫用しなければ将来の世代が使える水を我々が使っていること、
そういう水に思いをはせ、考えることが重要だ。
水資源が崩壊しそうなら、環境のコストに目を向け、
それを修復するコストに我々が対価を払うべきだ。
「水リテラシー、環境教育が必要だ。」
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NHK 未来への航海 第一回 レスター・ブラウン
NHK 未来への航海 第二回 レスター・ブラウン
世界のかんがいの多様性(農水省 写真多い70ページ)37.5 MB
水資源と農業用水に係る資料集(農水省 ほとんど白黒71ページ)3.56 MB
沖大幹助教授 東京大学生産技術研究所 仮想水 (Virtual Water)
ワールドウォッチジャパン
e's Inc. - レスター・ブラウン:エピソード|アースポリシー研究所
藤井孝男 国民のための農業食糧政策
「沖大幹助教授等のグループ」と「農水省の文書」と
「ワールドウォッチ研究所」の試算はそれぞれ数値が微妙に違う。
しかし、悪い状況だということは変わりない。
欧米に目をつけられたアフリカの国は無料で食料を援助される。
ここまではいいのだが、欧米はその援助食糧によって
地元の農民、商人が食料を売る経済行為の邪魔をする。
食料品店を赤字倒産させ、社会基盤を崩壊させる。
その国の社会基盤が崩壊すると、
社会秩序が乱れ、食べ物を奪ってケンカが始まる。
そのケンカ中に、欧米は武器を売って天然資源をいだだき戦争をあおる。
【未開地紛争の典型的モデル】
A国 = 発展途上国
独裁者←--------先進国による武器食糧支援
|
・・・・・A国政府(独裁政権)・・・・・-----------------→見返りとしての油田利権など
軍出動・実力鎮圧←---アメリカ、中国、フランス、ロシアなどによる武器の供給
↓
<衝突>→【紛争】
↑
圧政への反発←------アメリカ、中国、フランス、ロシアなどによる武器の供給
・・・・・・・・A国国民・・・・・・・・
【主な武器食料輸出国】
アメリカ ロシア フランス ドイツ
イギリス スペイン カナダ ベルギー スイス
スウェーデン(おもに高所得国家向け)
中国(対人地雷輸出・保有量世界最多、後進国向装備が多い)
2001年の7月にブッシュ大統領は、
「自らの国民を食べさせるに足る食料を生産できないような国を想像でき
ようか。そんな国は国際的な圧力に従属する国、危険に直面した国となっ
てしまうだろう」と米国内の週遊演説にて言い切った。
第二次世界大戦後、欧州は米国に対して対等にモノを言う。
→米国はすました顔して普通に食料禁輸措置をする。
それで欧州は米国に対して不信感を抱き、
第二次世界大戦後の食料自給率を高めている。
農産物の最大の輸出国である米国には、国家安全保障上や
外交政策上または国内の供給不足の理由により、
農産物輸出を規制または禁止できる法律があり、これまで、実際に、
1973年に大豆・同製品の輸出禁止ないし規制、
1974年及び75年の旧ソ連、ポーランドに対する小麦の輸出規制、
1980年の旧ソ連に対する穀物の部分的輸出禁止が行われた。
平成15年
食料自給率 40%
穀物自給率 27%
ヨーロッパは、18世紀のイギリス産業革命以降、先進的に工業化を進め
る中で、食料の多くは輸入に頼っていた。第一次世界大戦直前の時点に
おいても、小麦をはじめとして多くの穀物が、非ヨーロッパ地域から輸
入されていた。ところが、第二次世界大戦後、ヨーロッパは地域経済化、
すなわち共通農業政策を歩み始める。中でも、1957年のローマ条約によ
り導入されたCAPと呼ばれる共通農業政策は、ヨーロッパの食料自給を一
気に高めることとなった。EU全体の穀物自給率は、1980年には、100%
を突き抜け、90年代はじめには120%に達したのである。
個別に見れば、英国は30年代半ば頃、穀物自給率はわずか30%であったが、
50年代はじめに52%に上昇し、80年代前半には120%へと目覚ましい上
昇を実現している。フランスは96%だった穀物自給率は、215%へと上昇
した。ドイツ73%から、114%へと上昇し、穀物輸出国に姿を変えたので
ある。米国は世界最大の食糧輸出国である。今世紀のはじめ、米国の農民
は一人あたり7人分の食糧に相当する作物を生産していた。それが今日で
は96人を養えるほどに増えている。2001年の7月にブッシュ大統領は、
「自らの国民を食べさせるに足る食料を生産できないような国を想像できようか。
そんな国は国際的な圧力に従属する国、危険に直面した国と
なってしまうだろう」と米国内の週遊演説にて言い切った。
平成12年、日本政府は食料基本計画を策定し、40%(平成15年同じ)の総
合食料自給率を、平成22年には、45%に引き上げることを目標に掲げた。
平成15年の穀物自給率は27%である。
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